【読書感想】「マイナス・ゼロ」広瀬正

読書

村上醍醐です。

 

広瀬正「マイナス・ゼロ」を読んでの感想です。

 

内容紹介

1945年の東京。空襲のさなか、浜田少年は息絶えようとする隣人の「先生」から奇妙な頼まれごとをする。18年後の今日、ここに来てほしい、というのだ。そして約束の日、約束の場所で彼が目にした不思議な機械―それは「先生」が密かに開発したタイムマシンだった。時を超え「昭和」の東京を旅する浜田が見たものは?失われた風景が鮮やかに甦る、早世の天才が遺したタイムトラベル小説の金字塔。

 

感想

タイムトラベル小説の傑作とされていますが、納得です。

 

タイムトラベルの扱い方はもちろん、本書の魅力は、昭和7年という初期の日常生活の描かれ方にこそ真髄があります。人々の付き合いや人情、テクノロジーの発達とその浸透を通した人々の描写が丁寧でとても温かく感じられます。

おそらく著者の思い入れも強いのでしょう、一部冗長だなと感じる箇所はなくはないのですが、それを補って余りあるトータルの面白さがあります。

ラストはタイムトラベルものにはよくある衝撃的な事実が明らかになるのですが、考え出すと難しくかえって恐怖がこみ上げてくるほどです。

 

SFと昭和初期を舞台にした時代小説の要素が程よくミックスされた名作であります。そしてとても読みやすい。これが初出1960年代ということに、ただただ夭逝した著者への敬意を表せずにはいられません。

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