ハイプ・サイクル2018日本版で気になったテクノロジー

仕事

村上醍醐です。

 

 

はじめに

ここ数年トラッキングしているものの1つにガートナー社がリリースしている「ハイプ・サイクル」というものがあります。IT業界に身を置かれている方はご存知のかたも多いことと思います。

世の中の潮流を見る上でなかなか優れたアウトプットなので、一緒に見ていきましょう。

 

ハイプ・サイクル – Wikipedia

 

「ハイプ・サイクル」とは

「ハイプ・サイクル」とはガートナー社が作った用語で、特定のテクノロジーの成熟度・採用度・社会への適用度を示す図です。

 

ガートナー社によると、ハイプ・サイクルは次の5つの段階から構成される。

  1. 黎明期(技術の引き金、Innovation Trigger) – ハイプ・サイクルの最初の段階は、「技術の引き金」またはブレークスルー(飛躍的前進)から始まる。新製品発表やその他のイベントが報道され、関心が高まる。
  2. 流行期(過剰期待の頂、Peak of Inflated Expectations) – 次の段階では、世間の注目が大きくなり、過度の興奮と非現実的な期待が生じることが多い。成功事例が出ることもあるが、多くは失敗に終わる。
  3. 幻滅期(幻滅のくぼ地、Trough of Disillusionment) – 技術は過度な期待に応えられず急速に関心が失われ、「幻滅のくぼ地」に入る。そしてメディアはその話題や技術を取り上げなくなる。
  4. 回復期(啓蒙の坂、Slope of Enlightenment) – メディアでその技術が取り上げられなくなった一方、いくつかの事業は「啓蒙の坂」を登りながら継続し、その利点と適用方法を理解するようになる。
  5. 安定期(生産性の台地、Plateau of Productivity) – 広範に宣伝され受け入れられるようになると、技術は「生産性の台地」に到達する。その技術は徐々に安定し、第二世代、第三世代へと進化する。その台地の最終的な標高は、その技術が広範に適用可能かあるいはニッチ市場のみかによって、様々である。

今やこの用語は新技術のマーケティングにおいて幅広く使用されている。

 

日本におけるテクノロジーのハイプ・サイクル:2018年

8月にグローバル版がリリースされ、10/11には日本版がプレスリリースされました。下記がその図です。

 

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図:日本におけるテクノロジーのハイプ・サイクル:2018年(出典:ガートナー)

 

まず気になるところ

ブロックチェーン

やはりこれですね。

昨年末から今年にかけて、仮想通貨・暗号通貨バブルにあわせて一気にバズった「ブロックチェーン」。これはピークを超え幻滅期に入ったとされています。私個人としては、インターネットバブルに近い形で広がっていくと考えており、ガートナー社の見解の通り、2,3年は落ち込み、4,5年以上をかけて実生活に浸透していくのではないかと想像しています。

 

ロボティック・プロセス・オートメーション

やはり昨年からよく見聞きしたいわゆる「RPA(アールピーエー)」と呼ばれるもの。人間の手でやっていたものを、ロボットにやらせてしまおう、というものです。こちらも幻滅期に入ったとされていますが、ガートナー社のハイプ・サイクルによると実用目安が2~5年ということで、先述のブロックチェーンよりは定着化は近いようです。

 

ウェアラブル・デバイス

アップルウオッチとかfitbitなどですね。幻滅期の底に近づいています。5年くらい前は、日経トレンディなどではいつも「来年流行る!」と特集されていた気がしますが、ずいぶん目新しさはなくなりました。

過去記事でも書いたように、ウェアラブル端末がより生活に根ざすには、スマートフォンとの連携を強化、そして生活の記録の幅を広げつつ、記録・保存するだけではなく、生活習慣へのアドバイス機能をもっと充実・実用的にすることが求められると思います。

そのためには「ビッグデータ」「ブロックチェーン」「人工知能」といったテクノロジーとの融合は必須で、これらの技術は連動しながら発展・浸透していくでしょう。

 

www.murakamidaigo.com

 

ビッグデータ

これも数年来のバズワードです。ビッグデータについてはガートナー社のプレスリリース内の解説が興味深いので、引用しておきます。

実際、この分析はこの後に言及する黎明期のテクノロジーとも関係しているとみています。

 

現在幻滅期の谷底から上昇中の『ビッグ・データ』は、安定期に達する前に陳腐化すると再評価しました。ビッグ・データの活用に向けた検証や試行は、医療、製造、公共サービス分野、さらには顧客とのエンゲージメントといったさまざまな業種や業務において今後も進むと考えられますが、対象が曖昧な『ビッグ・データ』という表現は使われなくなり、業種・業務特化型ソリューションの一部として広がっていくとみているためです

 

個人的に気になった or 知らなかった黎明期のテクノロジー

気になるのはやはり黎明期のテクノロジーですね、これから定着するか沈静化するかはわかりませんが、いずれにせよ今後盛り上がるであろうフェーズなので、今のうちに把握しておくことは悪いことではないと考えています。

 

個人的に気になった or 知らなかったテクノロジーについては、Webで調べて見ました。しかしながら、まだ技術として発展フェーズなので解説記事も一部曖昧な部分があり、はっきり「どういうものか理解した!」とまでは言えませんが、なんとなくイメージがつかめたつもりです。

 

ペース・レイヤ・アプリケーション戦略

www.sbbit.jp

ガードナー社が提唱している考え方のようですね。アプリケーションのタイプによって重視する点を変えるという層別管理の考え方でしょうか。これをハイプ・サイクルにいれるとは若干手前味噌な感じがしてしまいますが。

解説がわかりやすいのは下記の記事です。

 

news.mynavi.jp

ペース・レイヤーとは、アプリケーションを変化の頻度(ペース)で分類する手法である。更新頻度の低いほうから「記録システム」「差別化システム」「革新システム」の3層に分類し、ビジネスの土台となる前者は品質や堅牢性、競争力の源となる後者はスピードを重視する。

 

ポストモダンERP

そもそもERPとは

ERPとは、Enterprise Resources Planning の略であり、企業経営の基本となる資源要素(ヒト・モノ・カネ・情報)を適切に分配し有効活用する計画=考え方を意味します。現在では、「基幹系情報システム」を指すことが多く、企業の情報戦略に欠かせない重要な位置を占めています。

 

ポストモダンERPは、本来ERPがもつ統合のメリットを保ちつつも、柔軟かつ迅速にビジネスに対応するため、コアERPとSaaS型アプリケーションを疎結合で連携したもの、のようです。(わかったようでよくわかっておりません)

クラウドの発展によって、バラバラだったシステムを統合したシステムが組みやすくなっているということと理解しており、自治体の電子申請システムなど使い勝手が今ひとつなものはこういった仕組みで改善されないかな、と思ったりしています。

 

www.kobelcosys.co.jp

 

統合型ERPと比較して、ポストモダンERPには次のメリットがあります。

ERPで全てのことを実現しようとするとアドオン開発も含めてERPが大変複雑になり巨大化します。コアな部分のみERPにすることで、複雑化・巨大化を回避することができるので、運用やバージョンアップのコストを下げることができます。

SaaS型アプリケーションは、多くのベンダーから提供されており、自社にとって最適なものを選択することができます。また、SaaSは、必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるので、カスタマイズの必要がなく、短期間、低価格で導入できます。

システム全体の拡張性が高いため、新技術(IoT、RPA(※2)、AI等)の採用のハードルを下げることができます。

 

プレディクティブ・サポート

これはそのまま「予測サポート」ということですかね。

 

www.itmedia.co.jp

innova-jp.com

AIを活用してITの障害やリスクを予測し、企業のIT運用・活用を支援したり、天気予報などと連携して人の移動や売上予測などマーケティングへの応用も有り得そうです。

仕事柄マーケティング用途での使い方のほうが想像しやすいです。ただ、いま各社がサービスインしているようなものの延長線上にあるものなので、興味深いですが、そこまで革新的という感じもしないのが正直なところですね。

肝になるのは「何のデータをインプットするのか」というところでしょうか。

また予測が出たからそうなると思ってそれに従うのではなく、その予測が出た裏側の事情を人間側が読み解いて、潮流を外さないことが技術そのものよりもますます大事になっていくのかな、と思います。

 

IoTプラットフォーム

前提となる「Iot」については下記から。

モノのインターネット – Wikipedia

 

モノのインターネット(物のインターネット、英語: Internet of Things:IoT)とは、様々な「モノ(物)」がインターネットに接続され(単に繋がるだけではなく、モノがインターネットのように繋がる)、情報交換することにより相互に制御する仕組みである。 それによるデジタル社会の実現も指す。

いまは徐々につながりつつあるだけで、発展性のあるサービスは生まれていない認識です。解説記事は下記がわかりやすいです。

 

www.sbbit.jp

 

膨大なIoTデータを収集して、ストックして、サービス化する基盤が「IoTプラットフォーム」と。まあそのままですね。

プレーヤーとしては、やはりスマートスピーカーで先行するAmazon、Googleあたりが本命ではないかと思いますが、ブレイクスルーにも期待です。

リンク先の図では、中国のファーウェイがちょっと以外。こんなこともやっているんですね。スマホをガンガン売ってプラットフォーム基盤を作っているということでしょう。今後どんな戦略でくるのか楽しみです。

 

市民データ・サイエンス

monoist.atmarkit.co.jp

www.sas.com

 

BIツールがより機能強化・レベルアップ、使いやすくなることで、データサイエンティストが特別なものではなく、もっと間口が広くなるということでしょう。

ブロガーの方や個人事業主が当たり前のようにGoogle Analyticsなどを使いこなしていくことからも、ストーリーとしてはわかります。ただ、「データを見る」だけでもそれなりにノウハウが必要なので、「デジタルネイティブ」のような若い「データネイティブ」世代が社会に出る10年よりもっと先で、そういう方向に行くのではないでしょうか。

 

デジタル・ビジネス・テクノロジ・プラットフォーム

プレスリリースにも言及されているくらいなので、ガートナー一押しのフレームワークでしょうか。

これからは、APIによって外部のさまざまなエコシステムやeマーケットプレイスと積極的につながっていくことが求められ、そうしたエコシステムによって、ビジネスモデルの描き方が違ってくる、とされています。

それは「ITシステム」「モノ(IoT)」「顧客(カスタマーエクスペリエンス)」「エコシステム」「インテリジェンス(データとアナリティクス)」の5要素で組み立てられます。

 

www.itmedia.co.jp

 

これから数年は、このバラバラな「エコシステム」をいかに結びつけるか? 効率化できるか? という問題意識がIT業界のトレンドなんでしょうかね。そのソリューションがこれであり、仮想化であり、WEBスケールであり・・・と理解しました。

 

AIOpsプラットフォーム

AIOpsとは「Algorithmic IT Operations」の略で「IT運用向け人工知能」という意味だそうです。

こちらを見ると、ビッグ・データと機械学習機能を組み合わせてITオペレーションをサポートするもののようです。

どうも漠然としていた「ビッグデータ」とか「機械学習」というテクノロジーが、目的と意図を持って別テクノロジーへ昇華されている、その象徴的技術のような印象を受けました。

 

ヒューリスティック・オートメーション

kotobank.jp

発見法ともいわれる。いつも正解するとは限らないがおおむね正解する、という直感的な思考方法。 理詰めで正しい解を求める方法であるアルゴリズムと対比される概念。 例えば、服装からその人の性格や職業を判断するなどは、ヒューリステックスな方法といえる。

 

コンピュータはアルゴリズムで動きますが、「ひらめき」みたいなことということでしょうか。上記サイトでの例示はある程度アルゴリズム化できそうなものなので、いまいちピンときていません。

 

まとめ

2018年、日本のテクノロジー業界では、モバイル・ソーシャル・クラウドはもはや「当たり前の存在」になりつつあり、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)、ブロックチェーンなどは期待のピークを超え、メディアで見ることは今後減っていくことが予想されます。ただ、数年後に実用化される可能性は十分にあります。

一方これから世間的に注目されそうなテクノロジーは、「ポストモダンERP」「IoTプラットフォーム」「デジタル・ビジネス・テクノロジ・プラットフォーム」といった、様々なシステムをつなぎ、連携することでより社会に貢献することを志向する技術たちです。あるいはオリジナル版プレスリリース内でも言及されている「AIの民主化」も起こり始めています。

ただ、日本版はオリジナル版と比べると、バリエーションに広がりがあまりなくワクワク感に欠けるような気がしました。後日、オリジナル版も取り上げたいと思います。

 

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